結局、私自身が目標を持って勉強をしたかったのではなく、ただ親にやらされているだけだったので、集中力に欠いたのでしょう。勉強ははかどらないし、成績は上がらないので、親はもっと勉強をやらせようとする。その悪循環が続いたので、私は逃げ出したくなってしまったのです」

 逃げ場として選んだのは塾だった。塾では先生から叱られることはない。家に帰って母の小言を聞くよりも塾にいたほうがいいと思い、塾で過ごす時間が増えた。帰りの時間が遅くなり、10時過ぎの最終バスを乗り過ごすと、父が塾まで車で迎えにきてくれた。

 帰宅して復習に取りかかると、寝るのが夜中の1、2時になってしまうこともしょっちゅうだった。その頃から父は私と母のやりとりを聞きたくなくて、夜中に「散歩してくる」と言いながら、みんなが寝るまで外で過ごすこともあった。

「『あなたがやりたいと言ったから行かせてあげたのに、そんなに勉強が嫌だったら塾なんてやめちゃいなさい!』と、テキストを投げつけられながら、母には何度も怒鳴られました。でも、『じゃあ、やめる』とは言えませんでした。

 確かに塾の試験を受けると決めたのは自分だし、通うと決めたのも自分。母を怒らせているのは、勉強しない自分が悪いとも思っていました。母は、塾の勉強に追いつくようにと、さらに家庭教師をつけて、私を私立中学に受からせようと必死でした。私は母に隠れてトイレでうたた寝をして、そこでまた怒られる……。睡眠不足で集中力は欠くといった負のループに入ってしまった感じです」