ただ、このようなトップのキャラクター、人間的魅力だけで勝てるほど国政選挙は甘いものではない。なぜかというと自民が大勝をするためには、党員や支持者だけではなく浮動票も取り込まなければいけない。つまり、自民党総裁というのは身内からの支持だけではなく、「自民党はそんなに好きじゃないけれど他に首相に適任な人もいないから入れておくか」くらいの好感度も持ち合わせてなくてはいけないのだ。

 そこで必要なのが3の〈選挙で浮動票が流れそうなリップサービス力〉である。

 今回の場合、まず茂木氏が掲げた「増税ゼロ」がこれに当たる。「増税メガネ」と揶揄された岸田首相と真逆の打ち出しという点でも悪くない。河野太郎氏は、デジタルを活用して給与などの情報を社会保障などの給付に結び付ける「デジタルセーフティーネット」も自身の強みを生かした打ち出しだが「年末調整廃止・全国民が確定申告」に対する批判が持ち上がっており、浮動票が食いつくかは     微妙な感じになっている。

 そんな中で筆者が「勝負勘がいいな」と感心したのは小泉氏の「選択的夫婦別姓の導入」だ。

 この件に関しては、野田聖子氏がずいぶん昔から主張をしていたが、党内の保守層を中心に反発が大きいことから、総裁選ではここを強く主張することは「悪手」とされてきた。実際、前回の総裁選では岸田氏も「議論が必要」と立場を曖昧にしてなんとか乗り切っている。では、そんなわかりきった「悪手」に小泉氏はなぜ踏み込んだのか。