菅氏は官房長官時代から「ご指摘にあたらない」「仮定の質問にはお答えできない」という鉄壁のディフェンスで記者の厳しい追及をかわしてきたこともあって、首相になってからも「批判に耳を傾けない」「議論を避ける」などと叩かれてきた。そのネガティブなイメージが支持率低迷と退陣にもつながったこともあって、岸田氏としては「真逆のキャラ」を打ち出し、それが見事に成功をしたというわけだ。

 これは今回の自民党総裁選においても、国会議員や自民党員たちは当然重視するポイントだ。この3年、岸田首相に対して向けられた批判の中には、「自分の言葉で喋っていないので共感できない」「原稿を朗読しているようで言葉が響かない」というスピーチ力への不満が多くあることは説明の必要もないだろう。

 では、そんな岸田首相と真逆のキャラクターを打ち出すことに現時点で成功しているのは誰か。もちろん、みな政治家なので演説はそれなりに上手ではあるが、その中でもやはり注目度というところで頭ひとつ飛び出ているのは、やはり小泉進次郎氏と高市早苗氏の2人だろう。

 小泉氏は「知的レベルが低い」という記者の批判を、冷静に切り返したことが高く評価されたし、高市氏に関しても「日本を強く豊かに」「国力強化」という保守層の心をわしづかみにするようなメッセージで、保守的な党員からそれなりの評価を得ている。