安倍元首相が長期政権を築けたのは、人気があったからである。叩く人もたくさんいたが、安倍元首相が演説をすれば、アンチも支持者も含めて凄まじい数の有権者が集まった。選挙でも勝ってきた。それが党内の反安倍派を黙らせて、政権を維持する求心力となったのである。

 こういう総裁選の現実から、ここに出馬する人たちは基本的に「前任者」と真逆のキャラクター、人間的魅力があることを仲間の議員や党員たちにアピールをする。

 この非常にわかりやすい例は前回の総裁選時、岸田首相が自らの「聞く力」をアピールするために持ち出した「岸田ノート」だ。

 これまで会ってきた有権者・支持者の話を書き留めるのが癖でこれまで凄まじい数のノートがある、といういわゆるエピソードトークで、3年前の総裁選時はワイドショーがこぞって「美談」として取り上げた。

 ただ、元宏池会事務総長代行の三ツ矢憲生氏は後に報道番組の取材で「15年以上付き合ってあんなノート1回も見たことがない」と述べている。この真偽はわからないが、岸田首相がこのエピソードトークをぶちまけた理由だけはわかりきっている。

「菅義偉前首相との真逆のキャラクター」を自民党員にアピールするためだ。