いろいろな見方があるだろうが、筆者は小泉氏が党内に対して「私は選挙に勝てる顔」だと強烈にアピールをするため、イチかバチかの勝負にでたと思っている。「選択的夫婦別姓」はやりようによっては、自民党支持者以外の浮動票を取れる格好のテーマだからだ。

 今年7月26日から28日にかけて、日本経済新聞社とテレビ東京が、結婚の際に夫婦が同姓か別姓かを選べるようにする選択的夫婦別姓への賛否を聞いたところ「賛成」が69%と「反対」の23%を上回った。同じ趣旨の質問をした2021年3月の調査で賛成は67%、反対は26%だったという。しかも、注目すべきは支持政党別に見ると、自民党支持者の6割弱も賛成にまわっているという点だ。

 自民党支持者の中には「選択的夫婦別姓が家族を崩壊させて国力を弱める」と考えている保守層は一定数いる。が、そういう人たちはほとんど高市氏に票を入れるはずで、この人たちに嫌われても小泉氏的にはそれほど痛くない。

 先ほど申し上げたように自民党総裁に最も求められるのは、浮動票も取り込める「選挙に強い顔」になるということだ。選択的夫婦別姓に強硬に反対する保守層からカリスマ扱いをされたところで、世論の7割近くに「時代遅れだな」とそっぽを向かれて得票に結びつかなかったら何の意味もない。むしろ、自分の政治信条に固執するあまり、党勢拡大という視点が抜け落ちている点では「総裁失格」と見られてしまうのだ。

 これからどんな展開になるかはわからないが9月12日時点、自民党総裁選の本質と、これが「イメージの戦い」であるということを最も理解しているのは小泉氏ではないだろうか。

(ノンフィクションライター 窪田順生)

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