男性の精子数が減っている

 4回のスクリーニングを行なう女性と比べると、男性側の不妊検査はとても簡単で、精液検査と感染症の採血のみです。精液は家で取ってもらってもいいし、病院が用意した部屋で取ってもらうこともできます。それだけで男性は終了です。簡単なので積極的に受けてほしいと思います。

 精液の採取は2日~7日間の禁欲後に行ないます。禁欲期間が短すぎても長すぎてもダメです。たとえば前日にセックスした後だと、精液の量自体が少なくなる可能性が非常に高いのです。逆に1ヵ月も禁欲をしていると、精子は毎日つくられるので、古い精子が一緒に出てきてしまい、全体としての精子の質が悪くなってしまうのです。

 女性側に異常がある場合は、生理不順や腹痛など自覚症状があることも多いのですが、男性の場合、自分の精子が大丈夫かどうかは精液検査を受けないとわかりません。

 精液には量的な問題質的な問題があります。量的な問題とは精子数が少ないことであり、質的な問題とは動きが悪かったりすることです。
 男性の精子に問題があった場合、女性側に問題がなくても人工授精や体外受精になります。

 ところで、男性の精子数は世界的に減少している地域がある、ということをご存じでしょうか。原因としては、環境汚染や農薬などの環境因子、内分泌攪乱因子が関係しているといわれていますが、詳しいことはまだわかっていません。結果として、男性不妊は世界的にも増えているようです。

おたふく風邪でも男性不妊になる

 目安として、WHO新基準(2010年)の精液所見の正常下限値を以下に示しておきます。

 精液量 1.5㎖
 総精子数 39×106
 精子濃度 15×106/㎖
 総運動率(前進+非前進) 40%
 正常精子形態率 4%

 精子の運動率とは、顕微鏡で見たときに、動いている精子がどれくらいの割合かということです。
 イメージをつかんでもらうためにお話すると、1回の射精で放出される精子は3億個もあります。毎日1億個の精子が生成され、常に生まれたての状態です。

 精子数と運動率を低下させる生活習慣があります。栄養価の低い食生活、大量の喫煙、大量の飲酒、ストレスや強い疲労感などです。

 また子どものころに鼠径ヘルニアや、停留精巣の手術をしていたり、思春期以降におたふく風邪による睾丸炎、性感染症、精索静脈瘤などに罹患したりしていると、男性不妊の原因となります。特に原因がわかっているものでは、精索静脈瘤、おたふく風邪による精巣炎が比較的多く見られます。予防接種をしていなくて中高生のときにおたふく風邪になってしまい、精巣にも感染して精巣炎になったという人が、男性不妊になっている人に多いのです。

 こういった病気を経験していたら、要注意だと思って検査を受けたほうがいいでしょう。