毎年2%ずつ賃金が上がると、10年後、20年後、30年後にはどうなるでしょうか。ごく簡単な指数計算ですので、手元のスマホの計算機でもやってみてください。(1.02)10乗=1.22、(1.02)20乗=1.49、(1.02)30乗=1.81。10年で2割増し、20年で5割増し、30年で8割増し。このグラフのイタリア程度にはなっているはずです。ところが現実にはそうなっていないのです。

たとえ個人が定期昇給しても
ベアがなければ全体は増えない

 そう、その毎年2%の賃金引上げというのは「定期昇給込み」の数字だからです。この30年間というのは、賃金の上げ方という観点からすれば、「ベアゼロと定昇堅持の時代」でした。1人ひとりの労働者(正社員)からすれば、ベースアップはなくても毎年自分の賃金は上がっていくのですから、まあこれくらいで仕方がないな、と思えたのかも知れません(編集部注/ベアは、ベースアップの略。ベアゼロは、賃上げ交渉の結果、ベースアップが0円であることを意味する)。

 でも、その定期昇給というのは、労働者個人にとっては確かに自分の賃金額の引上げではあるのですが、それを全部足し上げたら、労働者全員の賃金は全然上がっていないのです。