監修者まえがき
現在、組織開発に対する関心が、人事関係者や経営者、コンサルタントなどの外部支援者を中心に高まり、日本においても多くの取り組みが行われています。
組織開発とは、チームや組織の効果性や健全性の高まりを目指した取り組みを指します。
近年では大企業を中心に、組織開発を推進する部署が設置されているところも増えています。
そこでは、「1on1」、「360度フィードバック」、「サーベイ・フィードバック」、「ワールド・カフェ」、「アプリシエイティブ・インクワイアリー」、「リフレクション・ラウンドテーブル」などの手法が実施されています。
企業のなかで組織開発に取り組んでいる方々のお話を聞かせていただくと、たとえば、「弊社では1on1をしています」と実施している手法について語る方が多いようです。
これらの手法を行うために、特別に設けられた場をつくり、企画として実施するのも組織開発です。このような、特別に設けられた場で対話や研修を行う取り組みは「構造化された組織開発」と呼ばれています。
その場にチームや組織のメンバーが集い、対話を通して現状を共有し、より良くするためのアクションプランを考えていく取り組みが行われることが多いようです。
ただ、このような「構造化された組織開発」を実施しているだけでは、チームや組織が変わらないことが多いのではないでしょうか。
計画されたアクションプランが実行されない、時間の経過とともに元の風土や関わりに戻っていく、ということが起こりやすいためです。
チームや組織が変化し、持続的に機能するには、組織の日常、つまり、日頃の業務のなかで、チームや組織のメンバーが現状に気づいてより良くする取り組みや行動を自発的に行うことが必要となります。
これは「構造化されていない組織開発」と呼ばれるものです。
たとえば、自分たちで計画したアクションプランを実行する、部下のやる気を高めるためにポジティブなフィードバックを行う、会議が終わる際に短い振り返りを行う、などが「構造化されていない組織開発」の例になります。
これは、チームや組織を良くしたいと願う推進者の意識や行動、ほかの人たちとの関わりを通して広がっていくものです。
つまり、組織開発を推進したい、チームや組織を良くしたい、と願う人々が変化の推進者(チェンジエージェント)となり、波紋が広がるように変化が起こっていくのです。