旅程を見てみると、「ハーバードは私のために研究プログラムを組んでくれたんじゃないか」と思うほど、私の興味にぴったりの企業やイベントが並んでいました。芸術系企業、テクノロジー系企業、長寿企業の視察に加え、日本の伝統芸能である「能楽」や「落語」の鑑賞会も組み込まれていたからです。

 今から振り返っても、本当に充実した研修旅行だったと思います。企業の視察、芸術鑑賞、それから食べ物も最高でした。1回の旅行で、最先端の技術を持つ新興企業から長寿企業まで多彩な企業を視察できて、何百年もの歴史を持つ伝統芸能を鑑賞できて、なおかつおいしい食事を堪能できる、このような国は世界のどこにあるでしょうか。私は日本以外にないと思います。

300年超続く老舗食品会社から
学んだ「長寿企業の秘訣」

 今回の研修で最も印象に残ったのは、日本企業のイノベーション能力の高さです。スタートアップ企業はもちろんのこと、数百年もの歴史を持つ長寿企業も驚くほど「革新的」であったのは、大きな発見でした。

 私たち教員は、食品メーカーから伝統工芸品メーカーまで、数多くの長寿企業を訪問し、すばらしい職人技を直に見ることができました。また、どの企業の方々も、長い歴史の中で伝統的な製品をどのように維持し、同時に進化させてきたのかについて丁寧に説明してくださり、ものづくりの真髄を深く理解することができました。

 視察した14社からは、いずれも深い感銘を受けましたが、中でも、老舗の食品会社「山本山」での体験はとても強く記憶に残っています。というのも、日本に到着して、最初に訪問した日本企業が山本山だったからです。

 6月17日の朝のブリーフィングで、教員チームのリーダーが「これから訪問するのは、世界で初めて“グリーンティー”を発明した会社です」と言ったときのことは、今でもよく覚えています。
※正確には玉露

 たがいに顔を見合わせ、「『グリーンティーを発明』するってどういうこと?」「グリーンティーって発明品だったの?」「どうやって発明するの?」「誰が発明したの?」と口々に話しはじめ、その場が一気にざわつきました。それぐらい訪問前から大盛りあがりだったのです。