東北大の教授、学生、出身者にはこの第4のパターンが多かったというのが筑波の観察である。

 筑波もそういうように、この思考法は東大を頂点とし地方新制大学や短大を底辺とする序列構造を生み、自分より上の大学には羨望を、下の大学には軽蔑の念を抱く心理状態を連鎖させる。大学序列の底まで行き着くと、その歪んだ感情は高卒者に向けられることになる。新制大学の成立によって誰でも大学に進学しやすくなる一方、各大学間に抗うことが困難な序列が形成され、可視化されることにもなった。

書影『「反・東大」の思想史』(新潮選書)『「反・東大」の思想史』(新潮選書)
尾原宏之 著

 1970年、OECD(経済協力開発機構)は日本に教育調査団を派遣した。元駐日米国大使のエドウィン・ライシャワー(編集部注/1961~1966年まで駐日米国大使、退任後はハーバード大学日本研究所所長)、日本研究者のロナルド・ドーア(編集部注/イギリスの社会学者、同志社大学名誉文化博士、日本学士院客員)、元仏首相エドガー・フォール(編集部注/随筆家、歴史家、伝記作家)ら錚々たる調査団員の大きな関心の1つは、頂点の東大(と京大)から末端の私大にいたる「社会的評価によるきびしい上下の序列」であり、「18歳のある1日に、どのような成績をとるかによって、彼の残りの人生は決ってしまう」大学受験の過酷さにあった(『日本の教育政策』)。