「日本に帰るつもりはない」
友香さんの強い決意

 多民族国家のカナダだけに、子どもたちも瞳や髪、肌の色、家庭で家族と話す言葉もそれぞれ違う。同じ職場の保育士は、ほとんどが韓国や中国、イランなどからきた移民だ。日本に比べて余裕のある配置基準(注:保育士1人がみる子どもの人数を定めたもの)や基本的に残業がない働き方などをSNSなどで発信していると、日本から「カナダで保育士になりたい」という相談が多く寄せられる。日本で働く保育士だけでなく、カナダで一から保育士資格を取りたいという人もいる。

保育士の月給が日本の小学校教諭超え!カナダに渡った元教員が「日本で生きていくのは無理」と語るワケ『ルポ 若者流出』(朝日新聞「わたしが日本を出た理由」取材班、朝日新聞出版)

 日本に帰るつもりはありますか――。そう尋ねると、友香さんは首を横に振った。

 日本は失敗に対する風当たりが強く、性別や年齢などに対する固定的な価値観で人をジャッジする社会だと感じている。だから、自己肯定感が低く、命を絶つ若者も後を絶たないとも思う。友香さんは、自身も日本にいたらきっと「価値がない人間」だったと言う。カナダでは性別や年齢も履歴書に書かないのが普通で、みんな年齢や体形にかかわらず好きな服を着ている。

「わたしにとって日本は本当の自分を無視して、別の自分を演じないといけない場所。生きていくのは無理なんです」