【94】2006年
リストラ父さん・フリーター息子
雇用悪化が生んだ「悲惨世代」
バブル崩壊後からの「失われた10年」の期間に就職活動をした世代(1970年~84年生まれ)は、「氷河期世代」「ロストジェネレーション(失われた世代)」と呼ばれる。2005年ごろから輸出産業の持ち直しなどで雇用環境は回復するのだが、ひとたび非正規労働に就いた若年世代に“敗者復活戦”の場は与えられなかった。そもそも企業業績の好転の背景には、非正規社員が雇用の調整弁として機能してきた面もある。
一方、同時期に企業が進めたリストラで職を失った中高年世代も多い。ちょうど氷河期世代の親に相当する世代だ。06年9月2日号では、この親と子の関係に相当するこの世代を「悲惨世代」と名付け、「リストラ父さんフリーター息子 悲惨世代」という特集を組んだ。
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ところが、ここへきて就職戦線は急激に改善しており、まるでバブル期の売り手市場を彷彿とさせる新卒争奪戦さえ起きている。こうなると、バブル世代と現在の新卒学生の狭間で辛酸をなめてきた世代は浮かばれない。
(中略)
若年低所得者の多くは「時代さえ違えば自分は正社員として力を発揮できた」と感じている。自らの能力や努力以上に時代の趨勢に流されたと感じている。それゆえ、不公平感が蔓延している。
若年世代の「ワーキングプア(働く貧困層)」に対して、中高年ワーキングプアの存在も見落とすことはできない。フリーターが集中する25~35歳の若年層の親に相当する世代である。
バブル崩壊後の企業リストラの波をまともにかぶった父親たちは、どちらかといえば身軽な若年層と異なり、家族を抱え支出も多い。なかには、父親もその息子も非正規雇用に甘んじている家族もある。「リストラ父さんとフリーター息子」は、まさに悲惨世代を象徴する存在といえよう。
日本の貧困層比率は、今や先進30カ国のなかで2位にランクインするほど悪化した。景気回復の陰に隠れて、悲惨世代の問題は日本経済の将来に大きな影を落としている』
フリーター(アルバイト専従者)、派遣社員などの非正規雇用者が増え続けた結果、雇用者の3人に1人が非正規雇用者であり、彼らの生涯賃金は正規雇用者の4分の1と試算された。働いても働いても豊かになれない「ワーキングプア(働く貧困層)」の存在は、景気回復基調のなかで社会問題化していった。
特集では、若年フリーターの多くが国民年金や健康保険の保険料を支払っていないことを報じている。彼らがこのまま高齢化していくと、年金財政は圧迫され、財政再建のために保険料が引き上げられる可能性がある。そして保険料引き上げは雇用に影響を及ぼし、中高年フリーターの再生産を促すことになると、本誌は予測している。この問題を放置すれば、資本主義経済の健全な発展を妨げる結果になりかねないと結論づけている。