2004年12月11日号「人材派遣急膨張の光と影」2004年12月11日号「人材派遣急膨張の光と影」
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『請負社員に対する製造業の依存度は高まっている。彼らがいなければ、「メード・イン・ジャパン」は成り立たないといっても過言ではない。
 電機連合が国内電機大手300工場を対象に実施した調査結果によれば、「業務請負を採用していない」とする工場は、全体のわずか9.7%にすぎない。過半数が「90年代以降に業務請負を採用」し、一工場(事業所)当たりの平均では正社員415人に対し請負社員は147人。日本を代表する産業の工場労働者の5人に1人は請負社員に置き換わっているのである。
 しかも、過去3年間で「正社員が増えた工場」はほとんどない。よくて「横ばい」だ。ところが、「請負社員が増えた工場」は51.3%と半分以上だ。正社貝を意図的に減らし、請負社員を活用する「雇わない経営」が急加速している構図である。
(中略)
 国内の失業率が底を打ち、製造業の空洞化に歯止めがかかった観はあるが、「雇わない経営」の流れは加速することはあっても、止まることはありえない。人材派遣・業務請負に対する依存はさらに深まるだろう。裏返せば、だからこそ人材ビジネス業界には成長余力があるのだ。
 だが、大企業が人材派遣・業務請負に頼り、市場が拡大するほど、皮肉なことに人材ビジネスの不祥事・トラブルも続出する。
(中略)
「偽装請負」も蔓延している。業務請負の場合、請負会社が現場責任者を送り込んで労働者への指示・命令を出す。人材派遣と異なり、進捗管理や欠員補充、残業管理などはすべて請負会社が責任を負わねばならない。
 ところが、多くの請負会社は、実際には現場責任者を置かず、注文主である工場側の社員が請負社員に指示・命令を出しているのが実態だ。注文主にすれば、まるで派遣社員のように使えるし、業務請負会社にすれば、現場責任者を置くコストが省ける。両者の利害が一致し、こうした「偽装請負」は半ば常識化している』

 本誌はいちはやく「偽装請負」の問題を報じているが、その存在が世間の注目を集めるのは2年後のことだ。06年10月、売上高5911億円(06年3月期)という総合請負業界最大手のクリスタル・グループの中核子会社が偽装請負を繰り返したとして、事業停止命令を受けた。これを機に、新聞やテレビの報道などで広く知られるようになり、この年の「新語・流行語」の候補にもなった。

 そして、非正規雇用の拡大がもたらした格差問題にも、社会の関心が集まっていく。それについては後述しよう。