若冲「二つの墓所」を訪ねる

宝蔵寺伊藤家の菩提寺「宝蔵寺」には、若冲の弟である伊藤白歳(宗厳)の作品も

 伊藤家の菩提寺である宝蔵寺にも遺髪は埋納されましたが、若冲には二つのお墓があります。

 一つが、大典禅師も住職を務め、最も縁が深かった相国寺(上京区)。京都五山第二位で、臨済宗相国寺派の大本山。金閣寺(鹿苑寺)も銀閣寺(慈照寺)も相国寺の山外塔頭(たっちゅう)です。同志社大学今出川キャンパスの北側に隣接しており、地下鉄「今出川」駅から徒歩7分ほど。裏寺町の宝蔵寺からは北へ3.5kmほどの位置にあります。

 若冲は生前、相国寺に自身の墓を建てました。「寿蔵」という碑文は大典禅師がつづったものと伝わります。墓所には、若冲の遺髪を納めた墓の両脇に、歌人の藤原定家、室町幕府8代将軍である足利義政の墓も並んでいます。

 相国寺の承天閣美術館には、若冲が寄贈した『釈迦三尊像』や『鳳凰図』といった作品が所蔵されています。また、宮内庁三の丸尚蔵館が所蔵している国宝『動植綵絵』は30幅の大作で、1889年に相国寺から皇室に献上されました。

 もう一つのお墓は、黄檗宗の石峰寺(伏見区)にあります。相国寺からは、京阪鴨東線の終点「出町柳」駅から乗車して「龍谷大前深草」駅で下車、歩いて5分ほどです。天明の大火(1788年)で錦市場の自宅が焼失してしまった若冲は、その後大坂の寺院に滞在します。そして、晩年の10年間ほどを石峰寺に草庵を結び、妹と共に過ごしました。境内には、土葬された若冲の墓のほか、若冲が下絵を描いて石工が彫ったとされる五百羅漢が竹林を背景に立ち並んでいます。

◆参考資料◆
美術館・展覧会情報サイト「アートアジェンダ」
佐藤康宏『もっと知りたい伊藤若冲 生涯と作品(改訂版)』(東京美術)
狩野博幸・森村泰昌ほか『異能の画家伊藤若冲』(新潮社)

【本文で紹介した名所ほか関連リンク集】
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