京都には17カ所の世界文化遺産があります。その中で、社寺以外唯一の存在が「元離宮二条城」(中京区)。保存修理工事を終え、18年ぶりに9月から本丸御殿が一般公開されています。今年の秋の観光シーズンは、二条城とその周辺から。洛中最長のアーケード商店街と唯一の酒蔵見学も忘れずに。(らくたび、ダイヤモンド・ライフ編集部)
江戸幕府の始まりと終わりを刻む二条城
15代将軍徳川慶喜による大政奉還の舞台となった二条城(上京区)は、1603(慶長8)年に江戸幕府を開いた徳川家康が、上洛時の宿舎として築いたお城です。3代家光の頃には、後水尾天皇を迎え栄華を極めます。江戸幕府の始まりと終わりを刻み、明治時代には皇室の二条離宮となり、現在の本丸御殿である桂宮邸の一部が京都御苑から移築されました。
1939(昭和14)年、宮内庁から京都市に下賜され、94(平成6)年にはユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界文化遺産に登録されました。インバウンドの観光客にも大人気ですが、じっくりと見学した人が意外と少ないのが二条城。せっかくの機会ですので、将軍家と宮家による二つの御殿をじっくりとご覧ください。
まずは江戸初期の将軍家による二の丸御殿。33室、800畳余りの広さを誇る大規模な書院造りの代表例であり、入り口から順に、控えの間にあたる遠侍(とおざむらい)、登城した大名や献上品を老中が取り次ぐ式台(しきだい)、将軍と諸大名が対面する大広間、さらに親藩や譜代大名との対面に用いられた黒書院、将軍の居間や寝所のある白書院が巧みに配置され、奥に行くにつれプライベートな色合いが増してきます。
そのことを目に見える形で表現しているのが、幕府のお抱え絵師であった狩野派による絵画の数々、一門の総力を挙げて取り組んだ障壁画です。入り口から大広間にかけては、将軍の威光を見せつけるかのような虎や鷹、巨大な松。これが、黒書院では雰囲気が一転し、優美な桜や牡丹、生活の場である白書院は心静まる水墨画が部屋を飾ります。
欄間(らんま)彫刻や飾金具にも当時最高水準の職人技が発揮されており、見どころ満点。じっくり眺めると時が過ぎるのを忘れます。疲れたら、小堀遠州が関与し、後水尾天皇もご覧になった特別名勝の庭園で休みましょう。