“AI作家”としか思えない、不審なアカウントが……

 “AIがネットで小説や記事を書く”……これはパンドラの箱を開けるようなものだ。中国の多くの作家たちは、そう感付いている。すでに番茄小説には、1日に10作品以上更新しているアカウントや、3カ月で200作品以上更新する速筆すぎるアカウントといった、不自然なアカウントが存在するのだ。

 こうしたアカウントの作品を読んでみると、書名とペンネームが異なるだけで他の作品と内容が同じだったり、話の始まり方が同じだったりするケースや、他の誰かの文体をそっくりまねたケースなどが少なくない。

中国の無料ネット小説サイト「番茄小説」中国の無料ネット小説サイト「番茄小説」

 AIがネット小説から学習し、ネット小説を生成するようになれば、作家の文体や特徴的な表現をまねして、AIの手でより洗練された作品が大量生産されることになるだろう。イラストや写真の分野で起きたようなことが、小説の世界でも容易に起こりうる。

売り上げが10分の1になった作家や、犯罪者扱いされる作家も

 作家たちが恐れているのは、著作権侵害ではない。

 最も恐ろしいのは、AIによって“海賊版”作品が登場することにより売り上げが減り、さらには、人間の作家が逆に犯罪者扱いされるという状況だ。ある作家は、「AIトレーニング補足規約」以降はトラフィックが減少し、1日の収入は以前の10分の1にまで減少したという。また他の作家は著作権を侵害したとして、番茄小説から作品公開を中止する処置を取られたという。どうも、AIが書いた作品が本物と認定され、学習の元となった作品を書いた作家が著作権を侵害したとみなされたためではないかと言われている。AIに“餌”を与えた上に収入が減り、犯罪者扱いされてはたまったものではない。

 「AIトレーニング補足規約」の追加は5月のことだった。作家らの強い抗議を受け、7月に、番茄小説は問題の追加条項を削除している。