中国ではどのように生成AIが使われているのか

 西側諸国のネットサービスを極力使わず、自国で賄おうとする中国。昨年生成AIが話題になると、中国でもすぐに多数の生成AIが登場し、「生成AIの登場でプロは仕事を奪われるのではないか」と心配する声が多く上がった。たとえば翻訳を例に挙げれば、意味さえ通じればいい文章は人からAI翻訳に置き換わった。しかし文章全体をきちんと把握し、含蓄があり最適な言葉に翻訳しようとする場合には、中国でもプロの翻訳家が活躍している。また、各社の生成AIに中国語作文をさせた比較レビューを見ると、「文章は正しいが、人間くささがなく、味わいがない」と辛口評価だ。

 中国ですでに生成AIが活用されている例としては、ドラマの脚本制作がある。脚本専用の生成AIサービスを使って、ドラマのある程度大まかなストーリーを作成する。これをプロトタイプとし、その後人の手でブラッシュアップすることで、今までよりも低コストで脚本が完成するのだ。AIも、脚本作成もわかっている業界人が使うものだし、作品のアウトプットは人間が演じるドラマになるので、これは問題になっていない。

 それならば、ネット小説サービスに、AIが書いた味気ないネット小説が出たところで、作家の脅威にはならないと思うかもしれない。しかしここに番茄小説の特徴が生きている。中国において、ネット小説サービスは、スマートフォンでの暇つぶし用途として長らく(少なくとも10年は)人気になっている。晋江や閲文といった老舗の有名なネット小説サービスと、番茄小説との最大の違いはビジネスモデルにある。晋江や閲文はkindleのようにコンテンツごとに課金するモデルだが、番茄小説は広告収入により無料でコンテンツを提供するモデルなのだ。

 課金モデルであれば、いい作品が高く評価されたくさん買われるが、無料配信になると、とにかく数を多く読んで消費しようとする人が増えてくる。読者が課金したくなるような高品質のコンテンツが求められる晋江や閲文のビジネスモデルとは異なり、番茄小説は大勢の人がたくさんアクセスしてくれればいいので、作品内容の質の高さよりは、ちょっと読んでみたくなる、表面的な快感を得られるようなコンテンツが大量にあることが求められる。