ネット社会を切り開いた
坂村健と村井純
慶応義塾の創設者である福沢諭吉は『学問のすゝめ』という啓蒙書を著した。慶応義塾高校(塾高、横浜市港北区日吉)の卒業生で、その教えに従って学者・研究者になった者も多数、出ている。
まずは、時代をリードしている優れた工学者から紹介しよう。
情報工学者で元東京大教授の坂村健は、インターネットなどの情報ネットワークに、いつでもどこからでもアクセスできる環境が整えば、場所、時間にとらわれない自由な働き方や娯楽が楽しめるという「ユビキタス」社会の到来を、早くから予言していた。
坂村は慶応義塾中等部―塾高―慶応大工学部電気工学科―同博士課程修了で、1979年に東京大理学部情報科学科助手に採用されてからは、慶応大に戻らず東大一筋で学究生活を送った。2015年には国際電気通信連合(ITU)150周年賞を受賞している。
純国産コンピューター・アーキテクチャー(パソコンを動かす基本ソフト)である「TRON」の提唱者であり、プロジェクトリーダーとしても知られる。コラムニスト・評論家としての一面も持ち、メディアや論壇によく登場する。
情報工学者で坂村と同様、インターネット社会を切り開いてきた慶応大教授の村井純もいる。近著に『インターネット文明』(岩波新書)がある。塾高で坂村より3期後輩だ。
村井は、日本におけるインターネット黎明期からネットの技術基盤づくり、運用、啓蒙活動などに関わり続けている。「日本のインターネットの父」とも呼ばれている。政府のデジタル庁顧問や、ソフトバンクや楽天の社外取締役を務めていたこともある。