この公演のチケットは即完したが、高額転売騒動は起きなかった。ダイナミックプライシングが需給バランスを保ったわけだ。10万円出してでも良い席で見たい人は、正式に10万円を払う。よって転売ヤーの出る幕はない。

 国内アーティストの公演でも「S席・A席」「センター席・アリーナ席」といった席ごとの価格設定はなされている。でもその差額はせいぜい数千円程度だ。これだと人気公演の場合、争奪戦が勃発する。転売ヤーにとってはビジネスチャンスである。

 チケットの高額転売問題はダイナミックプライシングで解決できる。しかし日本ではなかなか導入されない。ダイナミックな(流動的な)値付けに対して抵抗感があるのだろう。

イベント主催者が
考え直すべき大切なこと

「貧乏人は来るなということか!」「ファンクラブ会員としてずっと応援してきたのに残念」そんな非難を主催者は過剰に恐れているのである。

 その結果、日本はピント外れな方向に進んでいる。2019年、チケットの高額転売を防止するチケット不正転売禁止法が制定されたのだ。チケットの高額転売を需給バランスの問題としてとらえず、安易な実力行使に出たのである。