戦後アメリカに占領された日本が
経済成長できた理由は?

 日本はアメリカに占領された歴史があります。今現在含めて植民地ではないのですが、戦後の日本の社会制度は、日本がアメリカに占領された時期にアメリカの手によって作られたのです。

 ですから、他国が作った社会制度がその後の発展に影響を及ぼしたという点ではアフリカ諸国や東南アジア諸国同様に、ノーベル経済学賞理論に照らし合わせて考察できます。

 日本がある意味で幸運だったのは、このときの制度設計が二転したことです。

 設計当初、つまり終戦直後の制度設計の目的は「日本を弱体化させて、二度と軍事国家として発展しないようにすること」でした。

 具体的には、以下の3点に主眼が置かれました。

(1)軍事力の解体
(2)財閥の解体と有力者の公職追放
(3)社会主義的な平等思想の浸透

 興味深いことは1945年当時はまだアメリカでも赤狩りが行われる前で、日本の戦後制度には世界でも進んだ社会主義的な要素が織り込まれたのです。

 ところが戦後の5年間に米ソの冷戦が表面化します。そこで「逆コース」とよばれる制度設計変更が起きます。

 具体的には、

・自衛隊につながる再軍備
・政界財界における公職追放の解除
・株式持ち合いによる企業集団の再構築

 という流れができたのです。

 ひとことで言えば、もし逆コースが起きなかったら日本経済は大企業が小さな企業群に解体されたうえに、リーダーとなる財界人が不在となり、傀儡のリーダーがGHQにすりよって権益を手にする事態になっていたでしょう。

 ノーベル経済学賞理論的に言えば、戦後の日本経済は発展できず、一部の政商だけが豪邸に住むような貧困国になっていたはずです。

 しかし、実際に起きたことはその逆です。