シンプルデザインは「スマホのため」?

「もっと生々しい話をすると、ホンネのところは世の中のデジタル化だ。消費者はWebサイトで、スマホで、店頭でもポスターじゃなくてモニターでロゴを見る。でもそれらのデバイスの解像度は必ずしも優れているとは限らない。雑誌の時代なら複雑なロゴやデザインも表現できたけど、スマホだとそうはいかない。低い解像度でもハッキリ見られるためには、フラットでミニマルなデザインである必要があるんだ。乱暴に言ってしまえば、“スマホのため”というところかな」

 スマホのため。時代だなぁ。

 しかしロゴなら分かるが、クルマのデザインとスマホの表示は関係がないのでないか。クルマのデザインは、なによりも実車の見た目が大切なはずだ。

「いまデザインの世界には“ミニマリズム”という大きなトレンドがある。シンプルでクリーンであることが、消費者に現代的で洗練された印象を与えるんだ。ブランドロゴだけじゃない。建築もそう、ファッションもそう、もちろんクルマもそう。シンプルにすることは、“ウチの会社は無駄を省いて本質に集中していますよ。誠実で透明性のある企業姿勢ですよ”、とアピールする手段でもあるんだ。MINIのインタビューをしたんだって?あのブランドは、そういうイメージがあるだろう。戦略として大成功していると思うね」

 なるほどミニマリズムで「誠実と透明性」ね。

 そういう彼は5台目のクルマを買ったばかり。ミニマリズムとは言い難い。ビジネスと実生活には大きな隔たりがあるようで。それはともかく……。