経営チームにデザインの責任者を参画させる意味とは

ビジネスにおいてデザインの役割が拡張している。従来の色・形の設計はもちろん、最近では新事業の創出まで、求められている範囲は広い。そこで、デザイナーや組織も変化が求められているが、その鍵を握る存在として注目されているのがCDO「チーフ・デザイン・オフィサー」だ。
まだまだ社会的認知が低く、像も曖昧なこの新しい「役職」について、NEC初のCDO・勝沼潤氏が、自身の経験や識者への取材を通してその役割、可能性について解像度高く示していく。

企業価値を高めるCDOという役職

「Cスイーツ」という言葉がある。企業において「C」、すなわち「チーフ(Chief)」が付く役職群を示す言葉である。スイーツは、ご存じの通り「一式」や「ひとまとまり」を意味するsuiteの複数形である。

 1990年代後半、当時ソニーの社長であった出井伸之氏が自らにCEO(最高経営責任者)という役職を冠して以来、日本企業でも各ビジネスファンクションの長をCのつくポジション名で呼ぶことが一般的になった。COO(最高執行責任者)、CFO(最高財務責任者)は、現在では多くの企業においてごく普通の役職名となっている。他にもCIO(最高情報責任者)、CHRO(最高人事責任者)、CTO(最高技術責任者)、CMO(最高マーケティング責任者)といった役職もよく耳にする。

 私は2023年4月にNEC初のCDOに就任した。多くの人はその「D」に「Digital」や「Data」という意味を当てはめ、「最高デジタル責任者」、あるいは「最高データ責任者」という役職をイメージすると思う。しかし、私の役職はChief Design Officer、つまり「最高デザイン責任者」である。私に与えられたCDOの役割は、NECの企業活動全体にデザインを活用し、デザインの力によって企業価値を向上させていくことである。

 この連載では、CDOを「チーフ・デザイン・オフィサー=最高デザイン責任者」を示す言葉として使うことにしたい。そしてデザインというアプローチで企業価値を向上させる新しい役割について、私が取り組んできたことをベースに皆さんと共に考えていきたい。