最近の日本経済は、実質GDP成長率がほぼゼロ、ないしはマイナスに近い状況になっている。そして物価が上昇しているのだから、これは文字どおりのスタグフレーションだ。つまり、「スタグネーション(不況)であるのに、インフレーションが収まらない」という最悪の事態だ。この状態がさらに悪化する危険がある。

「賃金を引き上げたのだから、リスキリングをして生産性を上げて欲しい」などという発言をする経営者がいるが、順序をまるで逆に捉えており、誠に心もとない。

 繰り返すが、本来、賃上げは、生産性の向上によって実現すべきものだ。だから、「リスキリングで能力を高め、それによって生産性が上がれば、それに見合った賃上げをする」と考えなければならない。

生産性上昇を伴わない賃上げは
スタグフレーションを加速させる

 ただし、実際には、賃上げを販売価格に転嫁するなといっても、止めることはできない。その結果、物価はさらに上昇し、実質賃金が下落し、消費が抑制されて、経済成長率が低下するだろう。

 こうした過程を抑えるためには、長期金利が上昇して円高が進み、輸入物価が下落し、消費者物価上昇を打ち消すというプロセスが必要だ。