三菱・三井・住友 揺らぐ最強財閥#9

最強財閥と称される三菱グループをつかさどる中枢組織が、グループ24社の首脳が集う三菱金曜会だ。実は、その金曜会で異変が起きている。グループの結束力が弱まる中で、存在意義が問われているのだ。特集『三菱・三井・住友 揺らぐ最強財閥』の#9では、三菱金曜会の実態に迫る。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

大成建設によるピーエス三菱買収
金曜会からのアクションはゼロ

 2023年11月、かねて業界再編を仕掛けると豪語してきたスーパーゼネコンの大成建設が繰り出したM&A(企業の買収・合併)第1弾に、ゼネコン業界はざわついた。ある準大手ゼネコンの首脳は「三菱か……。企業グループが異なる合併とは……」と驚きを隠さなかった。

 みずほ銀行系「芙蓉グループ」に属する大成建設がTOB(株式公開買い付け)により連結子会社化したのは、橋梁工事に強い中堅ゼネコンのピーエス三菱(24年7月にピーエス・コンストラクションに社名変更)だ。買収までピーエス三菱は三菱グループに所属し、三菱グループ主要企業の首脳が集う三菱金曜会にも加盟していた。

 ゼネコン業界関係者の間では、大成建設によるピーエス三菱の買収は一筋縄ではいかないという見方があった。三菱グループの企業が買収されるという一大事ならば、金曜会がアクションを起こすのではないかと予想されていたからだ。

 しかし、全て杞憂に終わった。金曜会関係者によれば、金曜会でピーエス三菱の買収が議題に上ることもなく、ピーエス三菱の社名変更に伴い、金曜会を脱退することについても、粛々と了承されたのだった。

「このままでは金曜会の存在意義が問われかねない」。ある三菱グループの首脳は危機感を募らせる。昨今は東京証券取引所の改革のあおりを受け、三菱グループ各社はグループ内企業の持ち合い株式の手放しを迫られている。結果、その結束力が揺らいでいるからだ。

 次ページからは、存在意義が問われている三菱金曜会の昨今の実情を明らかにする。三菱金曜会には今、遠心力が働いているというのだ。そして、三菱グループの結束を崩壊させかねない、イベントも解き明かす。その引き金を引くのは、東京海上ホールディングスである。