儲かる農業 下剋上#20写真提供=千興ファーム

ダイヤモンド編集部が選定するレジェンド農家5位にランクインした熊本県の千興ファームは、熊本地震を含め3回もの難局に直面している。それでも、未曾有の経営危機に見舞われながらも不死鳥のように復活、グループ年商は64億円を稼ぐレベルにまで持ち直した。特集『儲かる農業 下剋上 ピンチをチャンスに』の#20では、記者が馬肉処理工場へ潜入し、千興ファームの知られざる「競争力の源泉」を解き明かしていこう。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

※2023年4月5日に公開した有料会員向け記事を、1カ月の期間限定で無料公開します。全ての内容は初出時のままです。

3度の危機を経て不死鳥のように復活
年商100億円目指す馬肉グループ

 熊本県上益城郡に立つ住宅や公営施設には、ピカピカの屋根が目立つ。2016年の熊本地震で被災した建築物はすっかり復旧しているが、その修繕済みの新しい屋根がかえって被害の深刻さを物語っているようでもある。

 震災の被害が甚大だったエリアのど真ん中に、「レジェンド農家ランキング5位」の千興ファームはある(レジェンド農家の詳細については、(レジェンド農家の詳細については、本特集の#6『「レジェンド農家」ランキング2023【ベスト22】上位陣のコメ生産コストは全国平均の3分の1!』参照)。子馬の輸入や馬の肥育、生食用馬肉の専門工場、卸、小売り、外食業「菅乃屋」まで、馬肉のサプライチェーンを一手に展開する企業グループだ。

 牛や豚の畜産で6次産業化(畜産物の生産だけではなく、食品加工、流通販売まで展開する)に成功している例は少なくないが、千興ファームは屠畜から製品製造まで「馬専用一貫ライン」を有している唯一の企業体である。

 千興ファームは震災で本社と工場が損壊し、2カ月稼働できない事態が続いた。競合に間借りする形で営業を再開させて18年8月に工場が本格復旧。被災前より生産規模を3割削減させた施設で再スタートを切った。

 実は千興ファームは、震災を含め3回の苦難に直面している。未曾有の経営危機に見舞われながらも不死鳥のように復活、グループ年商は64億円を稼ぐレベルにまで持ち直したのだ(19年に熊本地震事業再生支援ファンドの支援を受けて再建中)。

 次ページでは、千興ファームの「競争力の源泉」を明かしていこう。そこには、驚くべき企業秘密が隠されていた。