芸人・大川総裁が、福祉の当たり前をひっくり返すプロたちに話を聞く。今回は知的障害者の一般雇用を可能にした久遠チョコレートの設立者・夏目浩次さんの挑戦を紹介する。夏目さんはチョコレートのことを「誰も排除しない食材」と表現。その理由とは。本稿は、大川 豊『大川総裁の福祉論!――知的障がい者と“食う寝るところ、住むところ”』(旬報社)の一部を抜粋・編集したものです。
周囲の猛反対を押し切って
消費者金融からの借金でスタート
大川 そもそも夏目さんは何がきっかけで久遠チョコレートを始めたのでしょうか。
夏目 最初はチョコレートではなくてパン屋さんでした。今から20年前、3人の知的障がいの方を一般雇用してパン屋さんを始めたのが原点です。最初の目標は最低賃金を上回る給料を出すことでした。
大川 それまでにパン作りの経験はあったのですか?
夏目 ありませんでした。福祉系の大学に行っていたわけでもありません。僕はもともと大学院で都市計画学をやっていて、駅のバリアフリー化に取り組んだときに、初めて障がいのある方と接点ができたんです。
そこから交流を重ねていく中で、障がいがあるというだけで働く選択肢がぐっと少なくなる現実を知りました。そもそも知的障がいの方には働く場所もありませんでした。日本はめちゃくちゃ豊かな経済大国なのに、それはおかしいじゃないかと思ったのが事業を始めたきっかけです。
大川 周囲から反対されなかったんですか?
夏目 当然ながら周囲は猛反対でした。ただ、パートナーは反対しないで受け入れてくれました。今まで一度も反対されたことはありません。