「好き」という感情が
どういうものかよくわからない

 恋愛は、一筋なわではいきません。自分の好意に相手が応えてくれるとは限らないし、相手の気持ちがわからず、すれ違うこともあります。

 LINEの返事がそっけない、会いたいときに会えない、仕事と私とどっちが大事?これって三角関係!?浮気疑惑発生……と、さまざまな感情が入り乱れます。人間関係がギクシャクしがちなASDの人にとって、これは、なかなかの難題です。

▼Mさん(26歳・男性)の場合

Mさん(26歳・男性)の場合同書より転載

 Mさん(26歳)は、ASDの中の受動型とされるタイプでしょう。断るのが苦手なので、グイグイ迫られると好きでもないのにつきあってしまう。

 そもそも「好き」がどういう感情なのか、よくわかっていない可能性もあります。人と関わるよりも、自分の世界で、やりたいことを自分のペースでやっているほうが、楽しいという人もいます。相手の感情の動きが理解できず、とまどってしまうことも多いです。

 積極的なタイプのASDだと、相手の意思に関わりなく自分の好意を押しつけがちです。相手に執着してストーカーまがいの行動をとることも。また、受動型と積極型のAS D同士がカップルになるケースもあります。受動型の人が耐え続け、関係が煮詰まってもそこから抜け出せず、苦しい思いが続く場合もあります。