自分が支払うコストには、2種類のタイプがあります。1つが、サービス利用金額として月額1000円のように支払金額として数値化できる「金銭的コスト」です。もう1つが、数値化できないコストで、多くのサービスから目当てのものを探し出す労力や手間といった心理的コスト、さらにはそれに費やす時間的コストなどの「非金銭的コスト」と呼び得るものです。

 知覚価値は、知覚品質との関係から次のように整理できます。

知覚価値=(結果品質+過程品質)÷(金銭的コスト+非金銭的コスト)

 このように、知覚価値は、商品やサービスの消費から実際に得られるベネフィット(利得)を、商品やサービスの購入や利用までの手間などのコスト(損失)で割ることによって算出することができます。

サービス継続の決め手は
消費者が実感する「コスパ」

 実際に顧客が体験した効果・性能(パフォーマンス)と、利用前から利用後までの一連の過程において要した費用(コスト)を対比し、後者よりも前者が大きいか否か、つまり、「コスパがいい」と消費者が感じるか否かでサービスや製品の継続または離脱が決定づけられます。

 それでは、「コスパがいい」と消費者が感じるのはいかなる状況でしょうか。単に価格が安いだけではありません。そして、単に品質が高ければいいという状況でもありません。

 こうした単独のベクトルではなく、これらを相対させたうえで、“価格以上の価値があると評価できる”と判断された際に「コスパがいい」と消費者は知覚します。この場合の価格(コスト)は、実際に支払った金額のほか、探索コストや心理的コストなどを含みます

 コスパがいい、すなわち知覚価値が高い状況とは、同じ価格帯のものと比較して、品質や機能、デザインやサービスなどがすぐれている(値打ちがある)と消費者が評価した際に知覚されます。

 あるいは、品質や機能面では同じ水準であるが、金銭的コストと非金銭的コストが低い状況においてもコスパがいいと知覚されます。

 デジタルサービスの特徴として、他社が提供するサービスと比較しやすいという利用者側の利点があります。

 自分が今使っているサービスが果たしてコスパにすぐれているのか、他にもっとコスパにすぐれたサービスがあるのではないか、オンラインでは店舗でのショッピング以上に価値と価格の関係を見直すことが容易になります。デジタルサービスの多くがお試し期間を設けていることも、能動的に情報を収集しやすくしています。