「買って損をしたくない」
現代人の消費者心理

 知覚価値を求める式から、顧客の知覚価値を上げるには、

(1)「利得」である品質を強化するか、

(2)「損失」であるコストを抑制するか、

 の2つのパターンがあることがわかります。

 実際に知覚価値が低いと感じるデジタルサービスの具体例を記します。

・コストに見合った価値や魅力がない・なくなった

・サービスの利用に労力や手間など非金銭的コストがかかる

・サービスを継続しても効果やベネフィットが低い

・コンテンツが多すぎて利用しきれないので「もったいない」

・使っていない機能やサービスがあって「もったいない」

・利用頻度が少なくて「もったいない」

 現代の消費者は「買って損をしたくない」という消費心理が強く働いています。昨今のように円安や原材料価格の高騰を受け、幅広い分野で値上げが続く時代には、これまで以上にコスパを重視する傾向が強まっています。

 人間は物事を判断するときに、さまざまな認知バイアスの影響を受けます。たとえば、行動経済学の有名な理論である「プロスペクト理論」によると、損失は同額の利益よりも大きく感じられ、損した悲しさの方が得した喜びよりも多くなると言われます。つまり、人は現状の生活をより良くしようという思い以上に、現状よりも悪化してしまうことを恐れてしまうといったように、損失回避性に敏感なのです。

20~30代の若者ほど
「コスパ重視」の傾向

 消費者庁の調査(2022年)において「費用対効果(コストパフォーマンス:コスパ)を重視する」に「当てはまる」(「とても当てはまる」または「ある程度当てはまる」の計)と回答した人の割合は、全体で45.2%となり、「当てはまらない」(「ほとんど・まったく当てはまらない」または「あまり当てはまらない」の計)18.1%を大きく上回る傾向が見られました。

 年代別に見ると、コスパを重視する世代は20代と30代がともに65.0%と最も高く、以下、「10代」(58.3%)、「40代」(54.7%)が続きます。50代以降になると、コスパを重視する比率が半数を切り、60代では35.1%、70代では25.8%と低下していきます。この結果から、年齢層が高くなるほど収入面にも余裕が出てくることから、コスパをそれほど重視しない傾向が示唆されました。