日本株やグロソブのピークと似た状況の米国株
S&P500の成長率は伸び悩むという予想も
さて、現在の米国株市場の状況を見てみましょう。日本の個人投資家に人気のある「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が急成長していることは、過去の日本株ファンドやグロソブと共通する兆候といえます。
米国株は過去10年以上にわたって堅調な上昇を続け、多くの投資家にリターンをもたらしてきました。しかし、ここにきて一部の専門家は、米国株の成長鈍化や今後のリスクを指摘しています。
ゴールドマン・サックスの最新レポートでは、過去10年間で年平均13%だったS&P500の総収益率は、今後維持が困難になるとの見解が示されました。将来のGDP(国内総生産)の伸び悩みや、現在の株価上昇をけん引しているのがアップルやマイクロソフトのような大型テックを含む上位10銘柄だということ、そして株価収益率(PER)が2000年のITバブル並みの割高さにあるということが、理由として挙げられています。
大統領選の結果次第でも株価の行方は変わっていくでしょうが、いずれにせよ、先進国とグローバルサウスとの対立など、地政学リスクが今後高まることは間違いなく、西側諸国の衰退と合わせ、先進国の株価が伸び悩むことは十分想定できる話だと考えています。
現在、投資の専門家ではないYouTuberなども“米国株(S&P500)推し”になっているのを見ていると、靴磨きの少年の法則※が該当するように感じてしまいます。
※ある日、プロ投資家がウォール街で靴磨きの少年に靴を磨いてもらった際に、その少年から「○○の株は買った方がいいよ」と勧められ、プロからすれば、「一般大衆で、普段株を取引きしないであろう靴磨きの少年が株の話をしていることに違和感を覚え、近く株式市場が暴落する」と判断、その後、実際に大恐慌が起き(1929年10月)、米国株は大暴落したという話。
米国株に投資する日本の個人投資家が増加し続けており、それ自体は悪いことではないと思います。貯蓄偏重の日本人の資産の一部を投資に回すことは、このインフレ下には非常にいい選択です。
しかし、こうした状況は、かつての日本株やグロソブのピーク時と非常に似通っており、投資初心者が多い日本の投資家がこぞって米国株を買う現在の状況は、素直に後追いしたいとは思えません。