それよりは、リスク資産は1種類だけにして、資産配分をシンプルに保ったほうがよいでしょう。リスクとリターンの調整やリバランスも簡単です。資産全体の投資効率は放っておいても変わらないという利点もあります。

 債券を入れる目的が単にリスクを減らしたいのであれば、債券を入れるのでなくリスク資産の割合を減らすだけで十分です。

 ここまでの話は債券に限った話ではありません。「銘柄の組み合わせが/最適なポートフォリオを組むには株式と債券と金を」といった記事は多く見かけますが、複数のリスク資産を組み合わせて資産配分を組んでもその努力が報われる可能性は低く、また見返りが大きいわけでもなく、結局はインデックスのみの資産配分に勝てないことが大半です。

リスク分散のために多くの商品を
買うのは投資効率を下げるだけ

 投資に関する書籍や記事でよく目にする「リスク分散」という言葉ですが、本書で用いている「リスク」と異なる意味合いを持つ場合があります。

 一般的なリスク分散は、投資対象を複数にすることで、損失の可能性を低減することを意味することが多いようです。しかし、本書のリスクは「リターンの標準偏差」(*2)を指していますので、「リスクを分散」という表現をそのまま解釈してしまうと「リターンの標準偏差を分散」となってしまいます。これでは意味が通りません。

*2 標準偏差とは、データの個々の値が平均値からどれだけ離れているか、そのばらつき具合の大きさを表す指標です。標準偏差が大きいと、データのばらつきが大きいことを意味します。投資においては、リスクが大きいということは、毎年の収益率のばらつきが大きく、不安定であることを意味します。