男性の横顔写真はイメージです Photo:PIXTA

トゥレット症は、自らの意思に反して声が出たり、身体が自然に動いてしまう疾患だ。トゥレット症当事者である酒井隆成氏は、病に対する地方と首都圏の認知格差や教育機会が不足していると指摘する。病気を持っていても幸せになれる社会を実現するために必要なこととは?※本稿は、酒井隆成『トゥレット症の僕が「世界一幸せ」と胸を張れる理由』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。

自分は病気を抱えているけども
幸せに生きられる方法はある

 トゥレット症の当事者は、身体に症状が出る部分以外は、思考がクリアで、自分がやりたいことはだいたいできる人も少なくありません。頭の働きは健常者とほとんど変わらないがゆえに、自分の病気を受け入れられない人が多いのも事実です。

「自分はもっとできるはずなのに、どうして……」と。

 僕自身、昔は「自分はトゥレット症という病気だとみなされているけれども、普通の人と何ら変わらないし、一緒だ」と思っていました。

 でも、いまにして思えば、そう思うこと自体が、病気に対する一種の差別偏見のようなものだったのかもしれません。本質的には、病気があろうがなかろうが、その人が幸せに生きられているのであれば、それ以外の部分はとても些末なことだと僕は思うようになったからです。

 なぜなら、そう思わないと、「病気があったら幸せになれない」と認めることになってしまうからです。

 でも、病気があったら幸せになれないなんてことは絶対にないはずです。どんな病気を持つ人であっても、幸せにはなれる。だから、昔のように無理して「自分はこういう症状はあるけど、ほかの人と変わらない普通の人間だ」と無理に思い込むことはやめました。