若手社員が絶望する瞬間
弊社の調査によると、それぞれの「A」に当てはまる答えは、「4.キャリア成長が望めない」である。
入社3年目までの社員の退職理由のトップが「キャリア成長が望めない」であることは、いったい何を意味しているだろうか。制度への不満だろうか、それとも仕事の内容そのものへの不満なのだろうか……。
答えは、そのいずれでもない。「キャリア成長が望めない」という答えの「心」は、若手社員がふと上を見たとき、管理職の中に魅力的なロールモデルが存在しない、ということではないだろうか。
自分の未来像である管理職にまったく魅力を感じることができなければ、この会社にいても自分が成長していくと思えないのは当然だ。
もっとストレートに言ってしまえば、「ああはなりたくない」「あんな人が自分の未来像なのか」という管理職しか存在しないとき、若手社員は絶望して退職の道を選んでしまうのだろう。
関野吉記 著
この事実を裏返して考えてみれば、魅力的な管理職の存在は、その企業にとって有力な採用ツールとなり得るということがわかるだろう。就活生に「あんな人と働いてみたい」と思わせる管理職は、企業にとってきわめて有効な広告宣伝媒体なのである。
単に会社にぶら下がっているだけの管理職しかいないのか、それとも地に足をつけて会社を支えている管理職が存在するのか。就活生は、インターンや企業説明会、あるいは採用面接を通して、それを肌で感じ取っているのである。
石坂産業や伊那食品工業の例が示すように、たとえ不人気業種や地味な産業であっても、人の採用はできる。ただしそのためには、明確な理念の設定とその徹底、社員と会社の良好な関係性、そして魅力的な管理職の存在が必要不可欠なのである。