手掛けた書籍の累計発行部数2千万部以上を誇る異色の編集者であり作家の草下シンヤ氏は、書籍を作る中でさまざまな難局を経験してきた。例えば著者が完成させた原稿が期待と違った場合、直し作業をどう進めればいいのか?いろんな性格の著者に応じた接し方と、人と仕事を進めるための要諦を語る。本稿は、草下シンヤ・大泉りか『ヒットを生む技術 小規模出版社の編集者が“大当たり”を連発できる理由』(鉄人社)の一部を抜粋・編集したものです。
期待していたものと違う原稿が
上がってきたらどうする?
著者が原稿を書き進めるうちに、もともとの企画内容と大きく違ってきたり、編集意図から外れてしまう場合もある。もちろん企画の段階で、お互いに内容に同意しているのだから、軌道修正をするのが本来の筋かもしれないが、著者には著者の意向があるぶん、頭ごなしに修正を要求するのは悪手になる場合もある。著者と内容を巡って対立するのを避けるのも編集者のテクニックだ。
一読してよくないと感じたとしても、まずは著者の書いてきた原稿で成立する道はないかを考えます。それはいいアイディアかもしれないし、出来あがった本が読者に面白いと思ってもらえて、売れればいいわけです。そう考えると自分に出ないアイディアが出ているという状況は、すごく可能性があること。だからまずそれで行く道筋はないかを探します。
「こういうところが、デメリットになりそうだな」とか「興味がズレていっちゃいそうだから、読者がここで読まなくなってしまいそうだな」とか「出だしがつまらないから修正したい」という話をして、著者のアイディアをベースにどうやったらチューニングできるかを考えていくと、その本に対する理解も深まっていく。