ネットで批判が上がった
「人身売買は不問」の判決

 しかし判決に対して再びネット上で批判の声が上がった。矛先は、とくに董被告が虐待罪と違法監禁罪のみで有罪となったことに向けられた。理由は2つある。

 1つは、董被告が人身売買罪に問われなかったことだ。中国では人身売買の買い手側の罰則は「3年以下の懲役」と定められている。最高刑が5年未満の罪は公訴時効が5年と定められ、董被告は人身売買については起訴されなかった。

 一方、人身売買の売り手側は死刑が最高刑だ。最高刑が死刑か無期懲役の罪は、20年の時効を過ぎていても罪状が悪質である場合は起訴できる。

 新華社によると、この事件で人身売買の売り手側の5人はこの規定に従って起訴された。なお、同じく売り手側だった他の2人については「罪状が比較的軽微」として起訴されなかったという。

 中国では人身売買の買い手側の罪が軽いことにかねて批判があり、この事件が発覚した直後からあらためて注目が集まっていた。判決を機に買い手側の量刑を引き上げるべきだという議論が再燃した。世論に押される形で、将来的に法律改正などにつながる可能性もありそうだ。

強姦罪が不問にされたのは
「社会の安定」のためか

 もう1つの理由は、董被告が強姦罪に問われなかったことだ。小さんは精神疾患が悪化したという17年以降も出産しているにもかかわらず、判決に関する官製メディアの報道は強姦罪について触れていない。