なぜならば、「能力」が高ければ高いほど、また「熱意」が強ければ強いほど、「考え方」によって、人生や仕事の結果は大きく異なってしまうからです。そのような、どのような環境になっても変わらない「考え方」を稲盛さんは「哲学」と表現しています。
この「考え方」の大切さを示す例は、枚挙にいとまがありません。ちょっとした挫折に遭遇し、人生を諦めるようなマイナスの「考え方」になった人もいます。成功し栄華を極めたような人が、「考え方」がマイナスになった結果、傲慢になり、没落してしまうケースも後を絶ちません。
過去には、「能力」に恵まれ、「熱意」もある高級官僚が、最後に「考え方」を間違い、国家に損害を与えただけでなく、自分の人生や仕事の結果も無残になった例もあります。日産を再建されたカルロス・ゴーンさんも、恐らく、最後に「考え方」を間違ったのだろうと思います。
小学校で習う初歩的な道徳心が
ビジネスにおいても重要になる
では、どのような「考え方」を持つべきなのでしょうか。稲盛さんはそれを「人間として正しい考え方」と表現しています。それは何かといえば、子供の頃に親や学校の先生から教えてもらった、「やっていいこと、悪いこと」であり、「嘘をつくな」「正直であれ」「人のために役立ちなさい」「一生懸命努力しなさい」「弱いものをいじめるな」「欲張るな」といった初歩的な道徳律のようなものです。