運動したい、でもできない……。そこで本連載は論文マニアとしても有名な大谷義夫先生(医師)が、82の論文世界の最新エビデンスをもとに正しく効果的な歩き方を書いた本『1日1万歩を続けなさい』から、今日から役立つ「歩き方のコツ」をお伝えします。ウォーキングは体にいい。それはたしかに事実です。でも実は「ただ歩くだけ」では効果が出にくいことをご存じでしょうか。同じ歩くなら「科学的な歩き方」で「最大効果」を手に入れる。ここを目指してみてください。

【医者が教える】夜中に何度も目が覚める人におすすめの習慣ベスト1 更年期の人も!
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長く眠れないなら
ウォーキングで睡眠の「質」を上げる

 睡眠の質は「1日の歩数」で決まることをご存じでしょうか。
 大分大学が平均73歳の男女860名の毎日の歩数と睡眠について分析したところ、次のことがわかりました(※1)。

・1日の歩数と「睡眠時間」に関連はない
・1日の歩数と「睡眠効率」は関連した


 睡眠効率とは、次の式で求められます。

「実際の睡眠時間」÷「寝床で横になっていた時間」×100

 たとえば「0時にベッドに入った瞬間に寝て、7時にアラームが鳴るまで目が覚めなかった」という場合は「睡眠効率100%」。
 一方、「22時に寝て6時に起きたけれど、正味5時間しか寝られなかった」という場合は「睡眠効率63%」になります。

長く眠れないなら睡眠効率を上げればいい

 年齢を重ねると、なかなか寝つけなかったり、夜中に何度も目が覚めたり、朝早く目が覚めたりするものですが、この調査によると残念ながら、1日の歩数が多ければ多いほど長く眠れるわけではないことがわかりました。

 しかしその一方で、1日の歩数が多ければ多いほど質のいい睡眠が取れていた(睡眠効率がよかった)ことがわかりました。

長時間のうっかり昼寝にも要注意

 また1日の歩数が多い人は、夜中に目が覚める時間と回数が少なく、昼寝の時間が短いこともわかりました。
 そこで大分大学は「ウォーキングは高齢者の睡眠障害の予防にも有効」と結論づけをしています。

歩くときは「胸」を張る

 また、ウォーキング中の姿勢を検討するにあたり、おもしろい実験を見つけました。
「胸を張って歩くと、男性更年期に効果がある」と考えられる研究です。

コロンビア大学の研究

 アメリカ、コロンビア大学の研究グループは、42名の男女に「背筋を伸ばした姿勢」と「猫背」のポーズをとってもらい、ホルモン分泌量を比較するという実験を行いました(※2)。

 すると、胸を張った姿勢ではテストステロンが増加し、コルチゾールが減少していることがわかったというのです。

テストステロン増、コルチゾール減で男性更年期に効果アリ!?

 テストステロンとは男性ホルモンの一種。これは性的な機能だけでなく、筋肉や骨格、意欲と集中力に関係します。

女性も無関係ではない

 これは少量ですが女性にもあり「やる気ホルモン」とも言われています。

胸をはって「テストステロン」を増加させて意欲をキープ

 加齢とともにテストステロンが減るのが、男性更年期の一因です。
 前向きに活躍していた男性が、突然、命を絶つ……。そんな悲しいニュースがありますが、これもテストステロンの減少が影響しているかもしれません。

姿勢よく歩けば「ストレス」も減る

 一方、コルチゾールは「ストレスホルモン」と言われるもので、アドレナリン、ドーパミンと並んで「いざ」というとき力を出すためのホルモンです。ただこれが多すぎると緊張状態が続いて疲れてしまうという逆の作用も発生します。

「太陽の光」を浴びながら「胸を張って」歩く

 この実験結果から言えることは、ウォーキングをする際も、特に男性更年期に悩む男性は太陽の光を浴びながら胸を張って歩くといいと言えそうだということです。
 胸を張って歩くだけで「やる気ホルモン」が増えて「ストレスホルモン」が減るとしたら、こんなにいいことはありません。

 私も意識的に姿勢を整えて歩くようにしています。

ウォーキング中は胸を張ろう

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※歩き方には「コツ」があります。お時間のある方は、本も参照してみてください。
※本稿は大谷義夫著『1日1万歩を続けなさい』より、一部を抜粋・編集したものです。本書にはウォーキングの効果にまつわるさまざまなエビデンスと、具体的で効果的な歩き方が紹介されています。ウォーキングで効果を出すには歩き方に「コツ」があります。このコツを本書でぜひ掴んでください。

【参考文献】
※1  Kimura N et al.  Association between objectively measured walking steps and sleep in community-dwelling older adults: A prospective cohort study.  PLoS One. 2020 Dec 14;15(12):e0243910.  doi: 10.1371/journal.pone.0243910. eCollection 2020.
※2  Carney DR, et al.  Power posing: brief nonverbal displays affect neuroendocrine levels and risk tolerance.  Psychol Sci. 2010 Oct;21(10):1363-8.doi:  10.1177/0956797610383437. Epub 2010 Sep 20.