例えば、外資系の戦略コンサルティングファームにおいては、その企業に2年以上在籍していないとその企業にいた人材とは見なされないことがあります。

 その理由は、「Up or Out」という文化にあります。2年以内に十分なパフォーマンスを発揮できない、「昇格」に値しない人材はその企業から出ていくことを余儀なくされるためです。

 また、どういった職種、プロジェクトについているかもポイントです。多くの人から一目を置かれている総合商社であったとしても、新卒の採用担当として長くキャリアを積んでいる場合、新卒の採用担当としては高い評価を得られる可能性が高いですが、それ以外の職種では重宝されません。

 要するに、「ブランド」を成立させるためには、「○○出身」というだけではダメで、「どの職種/プロジェクト」に「何年在籍していたか」が大きなポイントになるわけです。

 当たり前に感じるかもしれませんが、多くの人がこの要素を見落としています。それゆえに、一見立派な経歴にもかかわらず、身動きが取れなくなっている人も少なくありません。

ブランドを正しく理解することが
キャリアの可能性を広げる

 このブランドに関するシンプルな認識が抜け落ちている理由は、まだまだ日本において転職がメジャーではないことが大きいと思います。平均勤続年数が4年のアメリカと比較し、日本は13年と言われています。つまり、30代の方にとって、転職があまり身近ではないため、正しいブランド認識を持つきっかけがありません。また、20代の場合はそもそも在籍年数があまり問題にならないため、所属さえすれば将来が安泰だという認識を持ちやすい傾向もあると思います。

 そしてもう一つ、正しいブランド認識が広まらない背景としては、転職の失敗例があまり語られないことがあると思います。

 私の実感値ですが、転職が100%成功したと言えない30代は、実はとても多くいらっしゃいます。必ずしも内定が獲得できないわけではないのですが、自身が想定していたほどブランドが通用せず、現在の会社に残る方がとても多いのです。

 ブランドに対しての誤認が大きいほど、転職活動がうまくいかず、現在の会社に残る決断をすることになる。結果として、どんどんキャリアが狭くなり、現在の会社に最適化された人材になってしまうのです。それ自体は悪いことではありませんが、転職を叶えたいと考えるのであれば、ブランドを正しく理解する必要があります。