経営の中枢 CFOに聞く!Photo by Yoshihisa Wada

証券最大手の野村ホールディングスは今年、「営業部門」を「ウェルス・マネジメント部門」に改称し、ブローカレッジ主体のかつての営業スタイルから資産管理型ビジネスに転換を図った。その効果は決算に表れているのか。そして「バルジブラケット」と呼ばれる世界的な投資銀行になり得るのか――。長期連載『経営の中枢 CFOに聞く!』の本稿で、北村巧執行役財務統括責任者(CFO)が「真剣に検討している」という買収構想と共に、野村の“現在地”を明らかにした。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

20年以来の好業績も収益源に変化
「われわれの伸びは非常に力強い」

――2024年度第2四半期(7~9月)決算の評価は。

 ROE(自己資本利益率)11.6%という数字が出まして、非常にいい内容だったと思っています。しかもウェルス・マネジメント、インベストメント・マネジメント、ホールセールの3部門で非常にバランスよく稼ぐことができた。

 四半期決算では20年度第1四半期(4~6月)以来の高水準ですが、実は当時は税引き前利益の60%強をホールセール部門が占め、しかもその大半が金利などのマクロプロダクトの収益でした。一本足打法だった状態から本当にバランスよく稼げるようになった意味で、ここ数年間取り組んできたモデルチェンジの効果が表れてきている。

――奥田健太郎社長は昨年のインタビューで「次のステージへ行く」と発言していました(『野村HD奥田社長、手数料ゼロに「驚きはない」SBI・楽天証券への対抗策と、再編へ次の一手は?』参照)が、実際に次のステージに向かっているのでしょうか。

 かつての営業マンを「パートナー」として再配置し、よりきめ細やかなサービスをできるように対応しています。パートナー1人がカバレッジするお客さまの数を絞り、しっかりと向き合うことによってニーズに応え、サービスできるようになってきていると認識しています。

 トップラインが伸びているのはマーケットの要因もありますが、業界でもわれわれの伸びは非常に力強い。それは戦略の変更が効いているからだと思います。

――「ストック型ビジネス」を重視されていると思いますが、進捗状況は。

 順調です。ストック収入とは、投資信託や投資一任などで当社にお金を預けていただくことで発生する収入です。それが第2四半期は500億円を超え、年間で2000億円に達する水準となりました。

 一方で費用もしっかりとコントロールし、ウェルス・マネジメント部門の費用をストック収入でどれだけカバーできるかを示す「ストック収入費用カバー率」は70%です。これを31年3月期に80%とし、その後100%を超えることも十分可能だと思っています。そうなれば経営としては非常に安定する。

――ストック収入が増えている理由は何ですか。

証券会社は業績予想を開示しないのが慣例だが、その理由は株式の売買取引など市況に左右される面が多いからだ。野村もかつて業績の振れ幅が極めて大きかったが、ストック型ビジネスへの転換で安定感は増している。だが、それでも懸念材料はある。その詳細について次ページで、北村巧CFOに迫る。