どれも半紙いっぱいに太い筆で堂々と書いてあり、わたしの椅子の隣にある小引き出しにしまって、ときどき眺めたりしています。マッチのお母さんも、きれいな字で手紙をくれます。やっぱり子供のころに書道を習っていたとか。
ウチの次男も近くの書道の先生のところへ通っていて、なかなか読みやすい字で、作文なぞ立派に書いていましたが、大人になったら下手になってしまいました。
なぜと聞いたら、仕事柄急いで書かなければならなくなり、雑な字になってしまったとか。長男は、次男よりちっこい字で……、親のわたしが恥ずかしい。
「どうもありがとう」は
自然なお礼の最適解
わたしの字というと、マンガ字。マンガに合った字を書くようになっていましたが、大病後は手が震えて、本当に字が書けなくなりました。書けたとしても、どこかしらがピュッと伸びてしまって、字になっていません。
毎日せっせと字を書くことを練習して、「その後のチッチ」を描くころには、下手でも何とか読めるような字を書けるようになりました。
絵もむずかしいけど、字もむずかしい。「ありがとう」は、よく書く字で、ていねいに書こうと、とても神経を使います。でも、いまだに「あ」がうまく書けません。

ところで、タクシーを降りるとき、「ありがとうございました」ではていねいすぎるし、「ありがとう」では偉そうだし……、と思っていたところ、漫画家の馬場のぼる先生たちとタクシーに乗ったときのこと。車から降りるとき、馬場先生が運転手さんに気軽に「どうもありがとう」とおっしゃったのです。とても自然で、それ以来、「ありがとう」に「どうも」をつけていい気分になっています。
しかし、このごろタクシーは全く乗らなくなったから必要ないので、「どうもありがとう」と自分に言ってみます。いえいえ、どういたしまして。