違ったリーダーシップを発揮した
厳しい始皇帝とユルユルの劉邦
中国史を紐解いてみても「強さと規律」という、いわゆる儒教的な思想で国を引っ張ってきたリーダーもいれば、「ゆるく、自然に」という、まさに老子的発想で国を治めていたリーダーもいます。
『「タオ=道」の思想』という本でも紹介されているのですが、中国全土が戦乱に明け暮れていた戦国時代を終わらせた英雄として知られる秦の始皇帝は、まさに前者のタイプのリーダーでした。
中央集権的な新しい社会をつくり、有名な「万里の長城」を構築し、「阿房宮」という大宮殿をつくるなど大工事を次々と実施しました。
そうした歴史的功績は揺るがないとしても、労役、兵役、重税などに庶民が苦しめられていた事実も一方では存在します。それを逃れようとする民は厳しく法律で罰せられました。
まさに「強さと規律」の政治です。
一方、秦国の体制を崩壊させ、漢という新しい国を築いた劉邦はできるだけ法の力を弱め、人民の意欲や自主性を重んじ、自然の流れに任せた政治を行います。
そんな劉邦の流れを汲み、もっとも老子哲学に影響を受けていたとされるのが五代目の文帝です。
強く硬い始皇帝と、弱く柔軟な劉邦や文帝。
どちらのリーダーシップがよくて、どちらが悪いという話ではありません。
まさに「ジャッジフリー」。
それぞれの「時」に応じて、適した方法を取ればそれでいいのです。
さて、現代はどうでしょうか。
強烈なリーダーシップを発揮する個人が自身の価値観に基づき、チームをグイグイ引っ張っていくスタイルは、どちらかといえば衰退の方向へ向かっているように私は感じます。
世の中や組織のあり方、ビジネスの様式、個々人の働き方、意識や常識が大きく変わりつつある現代では、過去の成功体験は通用しなくなり、個人の価値観を押し通すことは許されなくなってきています。
強い支配、強いマネジメントは時代にそぐわなくなっているようです。