日産自動車の2024年9月中間決算の営業利益が大幅減となった。中国の販売不振に加えて、米国事業の不振が響いた格好だ。なぜ日産は米国でここまで苦戦を強いられているのか。特集『日産 消滅危機』の#4では、その原因と今後の見通しに迫る。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)
営業利益90%減の主因は米国事業の不振
販売奨励金、半期だけで1000億円の費用計上
日産自動車が11月7日に発表した2024年9月中間決算の営業利益は前年同期比90.2%減の329億円だった。
大幅減益となった要因は米国事業の不振だ。小売りの販売台数の落ち込みを見ると、米国は2.7%減の44万9千台と、5.4%減の33万9千台となった中国と比べて踏みとどまっているように見える。
だが、日産の大幅減益をもたらしたのは、販売台数の減少ではなく、むしろ、不人気なクルマを売るための販売奨励金(値下げの費用)の増加である。欧州における販売奨励金が362億円なのに対し、米国での販売奨励金は1004億円に上っているのだ。
24年3月期の通期決算では、販売奨励金の影響額が524億円だったが、今期は半年で前期の2倍もの費用がかさんでいることが分かる。
これまでは半導体不足を背景にクルマ不足が続き、販売奨励金がなくても売れる状況だった。日産の商品力が、トヨタ自動車やホンダと比べて劣っていることが、クルマの供給不足によって覆い隠されていたのだ。しかし、クルマの生産が回復すると、実力差が隠せなくなった。日産は販売台数の規模を維持するため、販売店に支払う奨励金を上積みして“何とか”売っている状況なのだ。
日産は「e-POWER」という独自のハイブリッドシステムを持つが、トヨタやホンダの同システムと比べ燃費性能が劣る。そのため、長距離を運転するドライバーが多い米国ではe-POWER搭載車を販売していない。ただ、北米の販売不振の要因は、駆動システムの優劣だけではない。
次ページでは、米国で苦戦を強いられているもう一つの理由と、日産車の販売が回復するかどうかの見通しを明らかにする。