師走恒例「輝け!お寺の掲示板大賞2024」受賞作品発表の時期が今年も訪れました。ウクライナで、中東で戦火は止まず、物価高で「減税」を望む声が高まり、選挙はSNSに翻弄された2024年でしたが、大賞受賞作品のテーマは「孤独」です。(解説/僧侶 江田智昭)
選んだ孤独はよい孤独
今年も早いもので、「輝け!お寺の掲示板大賞2024」の受賞作品を発表する日がやって参りました。7回目(TVドラマ風にいうと『シーズン7』です)となる今回は、2024年7月1日から9月30日までの応募期間中にお寄せいただいた3755作品の中から、審査員一同じっくり検討いたしました。今回も非常にたくさんのご応募をいただき、誠にありがとうございます。
投稿された作品の傾向を分析してみますと、今回は流行を追い求める言葉が減少し、仏教の教えに基づいた、しっかりとした言葉が多い印象を受けました。
審査の結果、大賞には「お寺の掲示板大賞」の常連でもある超覚寺(広島市中区)の作品「望もうと望むまいとあなたは独りじゃない。」が選ばれました。おめでとうございます。
第6回は日蓮宗の妙円寺(東京都渋谷区)の「言葉だけ立派な者は敵である 釈尊」という厳しい言葉が大賞を取りましたが、今回は逆に、温かい言葉が選ばれました。今年の大賞作品に対する講評は以下の通りです。
孤独な状態を望む人、望んでいないのに孤独な状態に陥る人、タイプはさまざまですが、この世に独りで生きている人など存在しません。どのような人も人間・生物・自然を含め無数の目に見えないつながり(縁起)の中で生かされています。社会の中の孤独・孤立問題が深刻化し、分断が強く叫ばれる現在の世の中だからこそ、「つながり(縁起)を離れて生きている人は存在しない」ということを想起させるメッセージに大賞を送りたいと思います。
「選んだ孤独はよい孤独」(フランスの言い習わし)という言葉があるそうです。この言葉は、朝日新聞の鷲田清一さんの「折々のことば」のコーナーで以前紹介されていました。現在、独りで生活を送ることを自主的に選ぶ人が増えてきています。自らの意思で選んだ孤独は、確かにその人の人生を豊かにさせる側面があります。
年末にかけて多くの有名人の訃報が伝えられましたが、中でも代表作『二十億光年の孤独』の詩人・谷川俊太郎さんの残された言葉の数々が今の時代に突き刺さります。糸井重里さんが、著書『ふたつめのボールのようなことば。』(ほぼ日文庫)の中で紹介しています。
「谷川さん、孤独なんですか?」と訊(き)かれて、
「だって、孤独は前提なんでしょ」と言いましたっけ。
人間にとって「前提」となる孤独とは、どのように向き合えばいいのでしょうか。