つながりという「縁起」の中で生きる

 能動的に孤独を選ぶ人がいる半面、孤独な状態に追い込まれる人もいます。年を取れば取るほど、身内や親友との死別があり、望まない孤独に陥る可能性が高くなります。こうした「望まない孤独」は、精神や肉体に大きな悪影響を及ぼすことが、近年さまざまな調査でも判明し、高齢化が進む先進各国の政府も、孤独問題に積極的に取り組むようになってきています。

 孤独を望もうと望むまいと、私たちは「つながり」の中でしか存在することができません。人間は決して独りで生きていくことはできないからです。無数のつながりの中で、今私は生かされています。このつながりを、仏教では「縁起」といいます。

「縁起」を示す有名なエピソードがあります。ティク・ナット・ハンというベトナム人の僧侶が「この一枚の紙のなかに雲が浮かんで見えますか?」と質問したそうです。あなたはどのように答えますか。

 雲がなくては雨が降らず、雨がなくては樹木が育ちません。そして、樹木がなければ紙は作れません。雲→雨→樹木→紙。みなさんはこのつながりを瞬時に想像できましたか?

 この世界に存在するすべてのものは、このようなつながりの中にあります。ですから、自分自身は周りのものと、どのようなつながりがあり、果たして何が自分を形づくっているのかを、1年の終わりのこの時期に、一度思い浮かべてみてください。

 両親・先祖・友人・空気・太陽・雲・雨・大地・樹木・動物……。きっと自分が無数のつながりの中に存在していることが分かるはずです。その中の何かが一つでも欠けていたら、この私という存在はなかったのかもしれません。

「孤独」を強く感じる一つの原因は、このようなつながりの想像力の欠如にあると思われます。もしあなたが孤独を感じたとしても、決して「独り」ではありません。「望もうと望むまいとあなたは独りじゃない。」のです。

 師走は慌ただしく、年末に向け締め切りに追われる日々を送っております。続く受賞作の数々につきましては、年明けから順次、またご紹介をさせていただきたいと思います。みなさま、良いお年をお迎えください。2025年も「掲示板」ともども、よろしくお願いいたします。