戦争の結果、4島はロシアのものになった
だから領土問題はないというロシアの主張

1.当事国間の外交関係の回復
2.賠償問題の解決
3.領土問題の解決

 このうち1点目と2点目は、1956年に結ばれた「日ソ共同宣言」で既に解決済みだ。

 このときに解決出来ず、今も残されている懸案は3点目。つまり領土問題を解決するのが平和条約の唯一最大の目的だというのが、日本の一貫した立場だ。

 しかし、ロシア側の現在の主張は、これとはまったく異なるのだ。

 この点について、私は2016年1月の記者会見で、ラブロフ外相に直接質問したことがある。

「日本側は平和条約締結と領土問題の解決をシノニム(同義語)だと考えているが、ロシアは領土問題が存在しないと考えているように思える」。

 私がこう指摘したのに対して、ラブロフ氏は「私たちは平和条約と領土問題の解決をシノニムとは考えていない」と断言した。

 ラブロフ氏はそのうえで、日本が第2次世界大戦の結果を認めることが平和条約の大前提だと主張した。つまり、平和条約を締結する際には、4島をソ連が占領し、それをロシアが継承している現状を受け入れろ、という主張だ。この立場は、2018年11月に安倍氏が2島返還路線にかじを切っても、変わることはなかった。

 さらに近年のロシアは一貫して、平和条約にはロシアと日本の幅広い善隣協力関係を盛り込む必要があると主張している。

 実際ロシアは、領土問題よりもそちらの方が重要だと考えているようだ。

 プーチン氏自身、2018年9月に領土問題と平和条約を切り離すアイデアを安倍氏に示した。

 まずは平和条約で日ロ間に「友人同士」の関係を作り、それを土台に領土問題を解決しようというのだ。

 しかし前述のように、領土問題の解決策を含まないような条約は「平和条約」の名に値しないというのが、日本の主張だ。

 このように、そもそも「平和条約」が何を意味するかについて、日本とロシアの考えがまったく異なるのだ。