今の一般的なロボットのイメージは、飲食店で注文したメニューを運ぶとか、生産現場であらかじめ設定された業務を行うものだろう。だが将来的に、AIが「空間認知」能力を持つと、まさに「ドラえもん」のように特定の人物の声に耳を傾け、感情を理解するITデバイスが登場することになろう。この分野で注目の研究者が、グーグル出身、現在はスタンフォード大学にて「人間中心のAI研究所」共同所長を務め、「AIのゴッド・マザー」と呼ばれる人物だ。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
ChatGPTが登場して2年…世界が変わった
米オープンAIが2022年11月、生成AIの「ChatGPT」を公表してから早くも2年が経過した。この登場は、私たちにとって重大な変革が実現した瞬間だった。それまであまり意識してこなかった人も多いであろう人工知能(AI)という、全く新しい文明の利器に対して、企業も人も一気に覚醒したからだ。
GAFAM(グーグル、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフト)をはじめとする大手IT企業は、AIの進展に対応するためにデータセンターを建設し、AI分野への投資を飛躍的に増やしている。そして、投資家もAI関連企業に高い関心を示している。文字通り、AI期の幕が開くことになった。
AI分野の中で、最も注目される研究の一つはAIの「空間知能」に関するものかもしれない。ChatGPTは、テキストデータを学習する大規模言語モデル(LLM)の一つだった。そうしたAIの機能に空間知能を付け加えると、実世界を3次元で知覚するように世界を捉えることが可能になる。
それに伴い、バーチャルな空間で行ったシミュレーションを、現実世界で再現するような能力を持つようになる。これが、「ラージ・ワールド・モデル」(LWM)と称されるものだ。
空間知能を備えたデバイス=ロボットは、自由に行動し、人間とのコミュニケートがより精度高く可能になる。その実現に向けた研究は、これからも日進月歩のスピードで進められることだろう。IT先端分野の競争、国際的なAI関連法規制などに無視できない影響があるはずだ。