飛躍的な発展を進めるAI関連業界の現状
現在、世界経済はAI関連分野の成長によって急速に変化している。AIの開発スタンスは企業によって異なるが、米GAFAMをはじめとする大手IT企業は、人間の脳に代わる汎用型のAIの開発を狙っている。
こうした進展に伴い、IT業界の構図にも変化が起きている。過去20年間、世界トップシェアを誇ったグーグルの検索サービスよりも、AIを使ったリサーチの方が、精度が良いとの指摘も出ている。
マイクロソフトが開発した「コパイロット」はその代表的な事例といえるだろう。チャット形式で人間とコミュニケートし、さまざまなアプリケーションとも連携する。IT大手はAI関連分野での先駆者利益を狙い、大規模データセンター関連の設備投資を増やしている。
IT大手にとって問題は、「キャッシュフローのミスマッチ」だ。データセンターへの投資でキャッシュのアウトフローが増える一方、収入はすぐには増えないからだ。投資が収益を生むまで、どのくらい時間がかかるかは見通しづらく、GAFAMらのビジネスモデルに懸念を示す投資家も多い。
最先端AI用チップの供給制約も深刻である。データセンターでAI(LLMなど)のトレーニングに必要な半導体の供給は、需要に追い付いていない。米エヌビディアが開発する「画像処理半導体」(GPU)や、韓国SKハイニックスが世界に先駆けて実用化した「広帯域幅メモリ」などがその代表例だ。
今のところ、AIチップの製造は台湾積体電路製造(TSMC)以外に有力な供給者が見当たらない。直近のエヌビディアの決算予想が、一部投資家による“強気な予測”に達しなかったこともあり、AIブームは早くも下火だとの懸念もある。
その一方で、新しいAI=ソフトウエアの開発に取り組む企業は急増している。スタートアップに投資するファンド界隈では、AI関連の新興企業に資金が殺到している。そのあおりを受けてか、気候変動問題に取り組む新興企業には投資資金が回りづらくなったとの指摘もある。