厨房にシェフがいない調理形態で
なぜフレンチを提供できるのか?

 まずコースの概要を紹介します。

 私が訪問した店舗では2回とも、最初にスープが提供され、その後に冷前菜3種が続きました。メインが肉料理でそれにパンを添えますが、ファミレスなのでパンの代わりにライスも選択可能です。そしてデザート。ここまでが1990円のコースの中身です。

 グルメとしてこのコースを食す場合、当然、飲み物を注文します。あまり知られていませんが、実はガストはワインがサイゼリア並に充実しています。ボトルが940円、グラスワインが240円程度と手軽なわりに美味しいと評判です。

 私は下戸なのでドリンクバーを注文し、コース中はトロピカルアイスティーを、食後はカフェラテを愉しませていただきました。

 さて、ここからが記事の本題です。フランス料理店ではなくファミレスでフレンチのコースを提供する場合に、何が障壁になるかというと、厨房にシェフがいないことです。

 セントラルキッチンという工場で調理をした食材を、アルバイトの従業員が温めて皿に乗せる。それでフレンチとして成立しなければならないというのが大命題です。

 それを前提にあらためてこのコース料理を眺め直すと、開発チームがもの凄いアイデアで生み出した料理であることが見えてきます。説明しましょう。

 まずコースの最初に温前菜のかわりにスープを持ってくるという工夫。これはカリフラワーとブイヨンのスープをフランス料理風に泡立てたものです。

ガスト「1990円フレンチ」で下剋上?勝ち組サイゼやロイホもマネできない巧妙戦略「カリフラワースープ ~カリカリパンチェッタとクルトン添え~」 Photo:Takahiro Suzuki

 セントラルキッチンで製造してもスープの味付け自体でフレンチの高級感を担保できるうえに、店舗では温めたスープを軽く泡立てる工程を加えているのだと思われます。この程度ならアルバイトの従業員もスムーズに調理ができます。

 そのスープにパセリとクルトンとカリカリにしたパンチェッタ(ベーコンのような肉)を浮かべるのです。