それに対して、運がよかろうが悪かろうが、絶対に儲かるはずのない「投資」も世の中には存在します。いま「投資」とカギカッコをつけて書いたのは、そもそも本物の投資とはまったく違う、詐欺に近いもの、もしくは詐欺そのものだからです。
ギャンブルには、あらかじめ決められたルールがあり、参加する人もそれを承知しています。どんなに損をしても、それがルールどおりに行われた結果なら、誰も文句はいえません。金融商品への投資も同じで、出資する人には事前にルールが伝えられています。
でも、これからお話しする偽物の投資=「詐欺」は、そのルールが守られません。事前に聞いていた話とは実態が違うという点で、詐欺はギャンブルとは、まったくの別物です。つまり、お金を集める側が出資者を騙している。ギャンブルで損をしてもそれは「被害」ではありませんが、詐欺にあって損をした人は「被害者」になります。
投資の詐欺に騙されて
女性は自ら命を絶った
ひとつ実例を挙げましょう。数年前、大学を卒業して社会人になったばかりの22歳の女性が、150万円の借金を苦にして自ら命を絶つという悲しい出来事がありました。お金は、消費者金融(いわゆる「サラ金」)で借りたものです。
銀行はお金を貸すときに相手のことをちゃんと調べて、返済できそうにない人には貸しません。しかし消費者金融はそのハードルが低いので、銀行よりも簡単にお金を貸します。返すあてのない人が、安易に利用すべきではありません。
おそらく彼女も、それはわかっていただろうと思います。彼女が150万円を借りたのは、「投資」に使うためでした。それがうまくいけば利益が出るので、借りたお金は返せます。
その「投資」は、大学の同級生からSNSを通じて勧誘されたものでした。
「海外に拠点を置く知り合いの会社が、AIを使って暗号資産を運用している。そこに投資すれば、多額の配当が出る」――この話を信用した彼女は、消費者金融で借金までして、投資をしたのです。