変化が激しく先行き不透明の時代には、私たち一人ひとりの働き方にもバージョンアップが求められる。必要なのは、答えのない時代に素早く成果を出す仕事のやり方。それがアジャイル仕事術である。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社)は、経営共創基盤グループ会長 冨山和彦氏、『地頭力を鍛える』著者 細谷 功氏の2人がW推薦する注目の書。著者は、経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)でIGPIシンガポール取締役CEOを務める坂田幸樹氏。業界という壁がこわれ、ルーチン業務が減り、プロジェクト単位の仕事が圧倒的に増えていくこれからの時代。組織に依存するのではなく、私たち一人ひとりが自立(自律)した真のプロフェッショナルになることが求められる。本連載の特別編として書下ろしの記事をお届けする。
ユニークなアウトプットが求められる時代
現代はデジタル化とグローバル化が進み、私たちの競争相手は国内にとどまらず世界中に広がっています。英語やインターネットを駆使すれば、誰もが情報を発信・収集でき、協力してくれるパートナーを見つけられる時代となりました。
しかし、情報が瞬時に広がるこの環境では、やみくもに収集を続けるだけでは、情報の波に埋もれてしまいます。その中で成果を上げるには、他にはないユニークなアウトプットを、いかに素早く生み出せるかが鍵となります。
教育課程において私たち日本人は、全員が同じ教科書で学び、同じテストで成果を求められてきました。この形式は、基礎学力を身につけるために非常に有効です。しかし、独自性が求められる現代社会では、それだけでは十分とはいえません。ユニークなアウトプットが競争力の源泉となる今、自らの考えを形にする力を意識して磨くことが、これまで以上に重要になっています。
誰に、何をアウトプットするかを明確にする
素早くユニークなアウトプットを生み出すためには、まず「誰に」「何を」届けたいのかを具体化することが重要です。情報を集めるだけではなく、それをどう加工し、相手に価値ある形で提供するかを考えるプロセスが、アウトプットの質を格段に高めます。
たとえば、社員旅行を企画する際、新卒社員向けであれば、会社への理解を深めることを目的に、多くの社員と交流できる場を用意するのが適切です。
一方、営業成績が優秀な社員の慰労会であれば、温泉旅行のようにリラックスできる環境が求められるでしょう。同じ「社員旅行」というテーマでも、目的に応じてアウトプットの形は大きく変わります。このように、最初にアウトプットの方向性を明確に定めることが、情報収集や企画の効果を最大化する鍵となります。
さらに、独自性を高めるためには、相手のニーズを深掘りすることが有効です。たとえば、新卒社員の期待や興味をヒアリングしたり、過去の成功事例を分析したりすることで、より実用的で効果的なプランを練ることが可能になります。
アウトプット力を鍛える日々のエクササイズ
アウトプット力を向上させるためには、日々のトレーニングが欠かせません。その一つの方法として、自分の意見を短文で発信する習慣を持つことが挙げられます。たとえば、新聞記事を読んで、自分ならどう考え、行動するかをツイートする練習をしてみましょう。ポイントは、記事内容に対する改善案や提案を交えることです。結論だけでなく、自分なりの視点を加えることで、ユニークなアウトプットを磨くことができます。
このようなエクササイズを続けることで、思考を整理し、タイムリーに発信するスキルが身につきます。また、アウトプットの習慣ができると、インプットの方法も自然と工夫され、情報の質や分析力も向上します。たとえば、同僚との会話や日常の出来事から新たな気づきを得て、それを発信するサイクルを繰り返すことで、思考の幅が広がるでしょう。
アジャイル仕事術では、アウトプット力を鍛える方法をはじめ、働き方をバージョンアップする方法を多数紹介しています。
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。その後、日本コカ・コーラ、リヴァンプなどを経て、経営共創基盤(IGPI)に入社。現在はシンガポールを拠点として日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社)が初の単著。